骨髄バンクドナー候補になった時のこと 1

kodomono2016-04-27


ある日、骨髄バンクから
オレンジ色の封筒が届きました。
そう、私に適合する患者さんがいるというのです。
でも、結局は提供には至りませんでした。
今回の文章は、私が悩んだ時に、
色んな人の体験談を聞きたい!と思ったけれど、あまり出会えなかったことから、
これから同じように悩むであろう方の参考になればと記しておくものです。
ちょっと長いかもしれませんが、ご興味があればお読み下さい。

… … …

もうすっかり忘れていたくらい10年以上昔、
たぶん献血をした時に、ついでにって感じで
骨髄バンクに登録しました。

それから、ときどき、会報はとどくものの、
ドナーとやらにはならずに終わるのかなあ?と思ってました。

そうして、ある日のポストに、
会報とは明らかに違う、オレンジ色の封筒が。

まずは、以前姉が「骨髄提供って大変なんだよね」
と言っていたのが心に浮かびました。

資料をじっくり読んでみました。

何度も
「ドナーの方は、提供を強制されることはありません」
「最終同意までは撤回ができます」
「よく考えてお決め下さい」
と書いてあります。
…むしろ不安になってきます。

採取の日までに、
なんと、8回前後医療施設へ行かねばなりません。
平日の日中、だいたい午前中です。
そして骨髄採取に関しては3泊4日。

かなりの時間的負担です。

骨髄移植では、全身麻酔の上、背中側から
ボールペン芯くらいの太さの針を刺して、骨髄液を注射器で吸います。
一度に数mlしかとれないので、何度も刺すことになり、
背中側の左右に1〜3カ所、合計2〜6カ所。
骨盤そのものには数十カ所〜百カ所程も刺すことになります。
(針穴は自然に塞がるそうですが、聞くだけで痛いですよね。)

かなりの体力的負担です。

もう一つ、私が登録した時には無かった、
「末梢血幹細胞採取」という方法もあります。
これは、薬で血液中の白血球を増やし、血液成分分離装置と腕を繋いで
血液中の必要な細胞を取り出し、残りの血液を静脈に返すという方法。
薬による副作用もあり、4〜6泊の入院、または、
2〜4日通院の後1〜3泊の入院、と
骨髄移植に負けず劣らずの負担があります。

移植が成功しても、拒否反応が出たり、
病気が進行したりして…うまく行かない…
せっかくの努力が報われない場合もあるそうです。

自分は移植を希望しても、家族の強い反対で断らざるを得ない人も
けっこういるそうです。

私が自ら登録したのです。
見知らぬ人であっても、私の骨髄で助かるかもしれない人がいるなら、
助けてあげたい、そう思ったから、登録したのです。
登録したくせに、いざとなったら
あれこれ理由をつけて断るのはいかがなものか…
でも、登録する時にここまでいろんなハードルがあると知っているかは
疑問ですし、私に関しては知りませんでした。

そしてなにより、登録時と決定的に違うことは、
私にこどもがいる、ということです。
3泊4日も家をあけるということが、こどものいる自分に可能なのか
という問題とともに、全身麻酔を伴う術中に万一何かあった場合
こどもがどうなるのかということも心配でした。

でも、でも逆に、です。
もし我が子が骨髄移植を必要とする病気であったなら、
どんなに小さい可能性であろうと、適合者には移植を望むことでしょう。

正直悩みました。
相方もあまり気が進まないと言いました。
周りにも聞いてみました。
ネットも調べました。
事務局にも電話して相談しました。

「大変なのよね」と言っていたくらいなので、詳しいだろうと
姉に聞いたら、あんまり詳しくありませんでしたが、
半落ち」を読んだ時に、自分も登録したとのこと。
そう言えば、この本は、私もいたく感動して、寺尾聡さん主演の映画も
映画館でボロッボロ泣きながら見たほどでしたので、
本は再読し、映画は、家族で再視聴しました。

半落ち」も含め、ドラマや映画で骨髄移植を希望する患者
のイメージというと、ほぼ若者とかこどもですよね。
でも、実際患者は、高齢だったりすることもあります。
正直いうと、私に適合している患者さんが、赤ちゃんやこどもだと
分かるなら、迷わず提供希望するけど、例えば年上だったら、
ちょっと迷います。でもそれが、自分の父母や親類なら希望します。

そう言うことを防ぐ意味もあるのでしょう。
「最終同意後に希望があれば」ドナーと患者は互いの
性別、年代、居住地方、のみを教えてもらえ、あとは秘密です。
そして、手紙のやり取りは1年以内に2回まで可能ですが、
これも事務局等を介してであり、個人情報を書くことはできません。
闘病が続き、1年以内に手紙を書けない場合もあるそうです。

また患者は、平行して5人までドナーのコーディネートを進めることができます。
患者の主治医は、ドナーの検査結果等全ての情報を検討し、
いちばん移植に適したドナーを選ぶのです。
だから、私と同じ立場の人が他に最大4人、いるかもしれないし、
だれもいないかもしれない、ということです。
これもドナーにも、コーディネーターにも事務局にも秘密です。

またドナーは、提供した場合、日時、場所など、
お互いが特定される情報は公表しないで、ということになっています。
周囲の人に話すことは差し支えないそうです。

期限ぎりぎりまで、よくよく考えました。
入院中こどもの世話は、
遠方の母が予定がなければ行けると言ってくれました。
相方も、映画を見たら、反対できなくなったようでした。
心が決まりました。
コーディネート継続をお願いしました。

ハードルが高く大きなボランティアだと思います。

でも、例えば、昼間に8回も通院するようなことは、
会社に勤めている時にはできませんでした。
出産前後しばらくもできませんでした。
ドナーに登録できる54歳までの期間中で、こどもも少し手が離れて、仕事も都合がついて…
私の人生でこんな大きなボランティアができるのは、今しかないだろう。
それなら、やるべきだろう。
そう思ったのです。

2へつづく